第20話 メキシコで出会った損と得、善と悪

レボルシオン通りも大分外れまで歩いてきて、何となく昨晩から何も食べてないという事に気付いた。そこで、せっかくメキシコまで来たのだからタコスでも食べていこうと思い、手頃なレストランを探し始めた。

レストランでのチップの計算方法は頭では分かっていたが、この時点では、レストランでチップを払うという行為に踏み切るにまだ早いと思っていたので、チップが不要な屋台型のお店を中心に探した。結果的に、慎重にお店を探しすぎてしまったらしく、どうやらレボルシオン通りをほぼもう一往復してしまったらしい。さすがにもう時間がヤバイと思い、店頭で調理が繰り広げられていてテイクアウト可能と思われたお店でメニューを見てみて、トルタススペシャルという料理を注文した。

 最初、店頭で腕を振るっているおばあちゃんに「トータススペシャル」と発音していたのだが、それだけでは伝わらず、結局ギブアップしてメニューを実際に指差して「これこれ」と伝えたところ、「あ?、トルタススペシャルね」みたいな感じでやっと注文する事が出来た。

このお店は、店の外からは一見してテイクアウト型の店に見えたのだが、どうやらただ店頭で調理をしているだけで、実は店の中にはしっかり席が用意されていて、結局そのまま店の中の席に案内されてしまった。もしかしたらテイクアウトも出来たのかもしれないが、それをお願いする勇気もなかった。

暫く、案内された席で座って待っていると、注文を取ってくれたおばあちゃんの孫と思われるウェイターやウェイトレスが店の中を行きかっていて、彼等から正式に注文を取ってもらうべきなのか判断に迷った。何で次々とこんな小さな事に悩んでしまうのだと自分が情けなくなりながらも、やはり店頭のおばあちゃんに確認しておくべきだったので意を決し、

“Do I have to order again?”

と聞いてみたところ、「その必要はないからそのまま座っていて」という返答が自然に返ってきた。実際、何でもない日常的な会話に過ぎなかったのだが、僕にとっては質問内容がそのおばあちゃんに100%伝わったという感覚が味わえて、その事が嬉しくて仕方なかった。そのまま通り過ぎてしまいそうな事だが、英語に限らず言語を使ってのコミュニケーションをする上で、この感覚は凄まじく重要な事なのだと思う。この感覚が置き去りになってしまっている限り、母国語だったとしてもインタラクティブ(対話の)な会話というものはいつまで経っても出来ないだろう。

トルタススペシャルはメキシコ版ホットドッグで、ボリュームもあるしメキシコの味を良く知っている訳ではない僕にでも何となく本場を感じる事が出来た。僕の食べたトルタスは、コッペパンを硬くしたようなパンに肉やチーズなどのいろんな素材が所狭しと挟まれていて、味はと言えば、僕の浅い食知識からはスナック菓子のドンタコスの味くらいでしか表現が出来ないのが辛いところだ。

このお店ではトルタススペシャルをたった1セットしかオーダーしておらず、チップの計算をしてみると$1にも満たない事が分かり、ジャラジャラ小銭を置いていく事になりそうだった。こんな事でさえ事前に想定していなかった為に、小銭を置いて行くのは失礼に当たるのかもと勝手に考えてしまい、明らかに多かったが$1札をテーブルに置いてレジで会計をしてしまった。すると、最初にオーダーを受け付けてくれたおばあちゃんが僕の置いたチップを見て、わざわざそのチップ分も考慮してお釣りを返してくれた!?20ほどだったが、メキシコに来てこんな親切に出会えるとは思わなかった。

その後、店を出てアメリカに再入国する為、国境目指して歩みを進めたのだが、その道中、フルーツポンチ専門の屋台に立ち寄ってマンゴーのフルーツポンチを注文したところ、そこのおばあちゃんは明らかに故意におつりを?20くらいちょろまかした。おつりの返し方が明らかにおかしくて、?25を2枚返せば良いだけの場面なのに、何故だかジャラジャラ小銭を数えている振りをして適当に僕に渡した。

損と得という大げさな話ではないのだが、結果的には痛み分けという結果となり、僕にとっては、メキシコ人に対して良くも悪くも日本人と変わらぬ人間らしさを感じた思い出深い出来事となった。

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