第35話 あなたのしてくれた事、僕は決して忘れない

その後もバスは進み続け、空港に近づくにつれて乗客は徐徐に少なくなり始め、それに比例して僕の胸の中の不安も増大し始めていた。案の定、空港を通り過ぎて終点のアビエーション駅というメトロ線も通っているトランジット駅まで行ってしまったようだ。

この日もフライトの時間を見越して早めに出てきてはいたのだが、だんだんフライトの時刻が気になり始めていた。この駅からはシャトルバスが出ていて、「シャトルバス=無料」だと勝手に決め付けていた僕は、急いでそれに乗り込んだ。

しかし、どうやらこのシャトルバスはメトロ線を利用した人に限り無料になるようで、運転手のおばちゃんに「メトロ線のチケットを買って来なさい」と言われてすっかり門前払いを食ってしまった。サンフランシスコ?ロサンゼルス間のフライトに間に合わなかった時もそうだったが、時間がなくて急いでいる時に門前払いを食うと本当にカウンターパンチを食らったみたいに想像を絶するようなクリティカルなダメージを受けてしまう・・・

仕方なく、僕はがっくりと肩を落としながらもメトロ線のチケットを買おうと券売機に向かった。すると、一部始終を見ていたと思われる一人のダンディーが、駅の階段を半分登ったところから、「ヘイユー、これ持って行きなさい」と僕に声をかけてくれて、何とメトロ線のチケットくれたのだ!

本当に嬉しかったし感謝の気持ちで一杯だったのだが、その時僕に使えた英語は「サンキュー・ベリー・マッチ」だけだった。どれだけその人に深く感謝の意を伝えるかは、それを、如何に心を込めて言うかしかこの時の僕には表現の方法がなかった。

日本ではこのような美しい光景はなかなか見られない気がする。その人は、僕に「アメリカにはいろんな人がいて、仕事とはいえ、たまに辛く当たってくる人もいるけど、悪く思わないでね。」って語りかけてくれているような気がした。

それは愛国心とかから来るのかもしれない。こういった愛国心を持って、日本の事に少しでも責任を持てる日本人が果たしてどれだけいるのだろうか。僕の場合も今の時点では出来ないと思う。だけど、こんなに美しい場面を演出してもらってしまっては僕も日本で実践せざるを得ないなと思った。そうやって、外国で得た素晴らしい影響を日本に輸入してくれる日本人が増えれば面白い結果になるかもしれない。

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