第58話 実家編

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大好きやを後にして、実家に向かうバスの車内で出発を待っていたところ、これまた偶然、仕事帰りの僕の父親が同じバスに乗り込んできた。

「おう、父ちゃん!」と呼びかけてどうやら気付いたようだが、車内が混んでいた為、父親はどんどん奥の方に押しやられてしまい、結局、ニックスを紹介出来ず終まいだった。

うちの実家は、メインの一軒家の他に離れの古~い一軒家がある。

恐らく築70年以上の極めて古風な平屋で、元々ぼっとん便所だったのを無理矢理洋式便所に変え、台所と風呂を改築して何とか住めるようにはしてはあったが、隙間風は容赦なく入ってくるし、屋根裏には何かしら動物が住み付いてしまっていて、夜中にポルターガイスト現象のごとく暴れまわるのだ。

思い切って全部立て直さなかった訳は、外見が新しくなってしまうと固定資産税が新築の設定になってしまうらしく、外見が古いままに保ってあれば固定資産税は安く済むからなのだそうだ。

僕の産まれる前は皆この離れの家に一家全員住んでいたらしいのだが、今では弟が一部の部屋を使っているだけでほとんど使われてなく、空いている部屋に僕等は寝泊りする事になっていた。

そのお化け屋敷のような家に案内したところ、ニックスはその日本の古風な家独特の雰囲気に興味深々になっていた。

昔、大学の頃にやっていたバンドで、無謀にもイタリアのバンドを日本に呼んで手作り全国ツアーをした事があったのだが、その時も新宿でライブをやった帰りに、ここにイタリア人6人を寝泊りさせた事があった。その時も彼らは皆興味心身になり、あちらこちらに散らばって行ってしまって収拾がつかなくなってしまった事があったが、ニックスもまた例外ではなかったようだ。

 文化の違いとは、こんなにもダイナミックなカルチャーショックを伴うもので、逆に、僕がシンガポールやイタリアに行ったとしたら、これと同等か、それ以上のカルチャーショックを受ける事になるだろう。

 違いを知って苦痛を伴う異国の文化もあるだろうし、知って得するものもあるだろうし、知らない方が良いものももしかしたらあるのかもしれない。だが、知らなければならない異国の文化というものもきっとあるのだと思う。

 それは、学校の教科書で学習しただけ得られるものではなく、きっと異国の地でその文化にどっぷり浸かって来ないと得られないものなのだろう。

 僕は、一度でも良いから異国の文化に身をどっぷりと浸してみたい。そうでもしないと一生答えが出ないから。

興奮冷めやらぬニックスはこう言った。

「こういった場所は、外国人にとって絶好のアピールポイントだよ!こんないいとこを遊ばしておくのは勿体無い!宣伝方法を含めてやり方を工夫すれば、絶対にビジネスとして成立するよ!」

スタンフォード大学やワシントン大学などでマーケティングを学んできた彼が言うのだから、かなり信憑性はあるのだろうな。

興奮してしまってなかなか寝ようとしてくれないのも、ここに寝泊りしたイタリア人の傾向と一緒で、ニックスが風呂に入って布団に入ってくれるまでに、かなり時間がかかったのだった。

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