衆院選2012(11)【TPP】自由貿易が国を崩壊させた例(ハイチの例から)

今回の選挙でTPP(環太平洋経済連携協定)が争点の一つになっていて、政党間でも僕たち国民の間でも、意見は大きく分かれているようです。

関税を撤廃する自由貿易は、政府による交渉で貿易の公正さを保障でき、国民が賢く消費活動をすれば、何も恐れることはありません。ただし、交渉に失敗し、国民が賢く消費活動出来ない場合、最悪の結果を迎えてしまう可能性があります。状況や立場などが違うのであまり参考にならないかもしれませんが、ここでは、ハイチの例を元に、何が起こりえるのかを考えてみようと思います。

 

西半球最貧国と言われるハイチ。2008年に起こった食料危機の時、人々が泥で作ったクッキーを食べている写真が話題になりました。これは大地震が起こる前のこと。穀物価格の高騰により、米の輸入が困難になったからなのです。これは、ハイチの人々が怠け者だったからなのでしょうか?自己責任?

ハイチは、元々、米も含めて自給率90数パーセントを誇る食料自給国でした。そんな国が、食料輸入依存国になり下がってしまいました。その輸入の7割はアメリカから。この急激な変化には、アメリカとの自由貿易開始が大きく影響しています。

関税をほぼ撤廃する「自由貿易」自体は良いも悪いもありません。それが悪く働くのは、「悪意がある」又は、「対等な立場で行われない」場合。ハイチの場合 は、明らかに対等な立場で行われていませんんでした。明らかに、アメリカが有利なように進められていきました。結果として、ハイチの主食生産農業は破壊されてしまったのです。

ハイチの主食生産農業が破壊された背景には、アメリカの圧力によるダンピング(公正な競争を妨げ るほど不当に安い価格で商品を販売すること)があったそうです。消費者としては、「どこ産のものか」、また「自国の利益になる方なのか」より、「値段の安い方」を選びたくなるものですよね。結果として、それまでのハイチの食生活が、アメリカ産の米食一辺倒になってしまったのです。

ハイチが食料輸入依存国に成り下がったところで、食料危機が襲いました。それまではアメリカから輸入出来ていた米が、輸入出来なくなってしまったのです。その時にはもう既に、ハイチは食料を自給する能力を失っていました。結果的に、泥のクッキーを食べるしかなくなったということです。

「米国のコメは大量の補助金なしでは競争力をもたない。貧しい国が米国との競争を強制されるのはスキャンダラスなことだ。もっと悪いこと に、彼らは安値輸出から自らを護る機会を否定される」オックスファム・インタナショナルの”貿易を公正に”キャンペーンを率いるフィル・ブルーマーの言葉です。

アメリカとハイチとの間で自由貿易が始まったのは1995年。長いアメリカの支配から、「ラバラス」という名で知られる草の根運動により初 めて民主的に選ばれた元神父のアリスティード大統領が軍事クーデターにより倒され、国連の承認の下、多国籍軍の介入まであった年の翌年のこと。

クーデターを起こした軍事政権は、アメリカに名目上の経済制裁を受けるが、秘密裏に援助を受けていました。しかし、この軍事政権が長続きしないと見たアメリカは、軍事政権とアリスティードとの間の条件付きの和平合意提案しましたが、軍事政権がこれを拒否しました。(アメリカの言うことを聞かなかったということ)

結果的に、国連の承認の下(国際社会の名の下)にアメリカは軍事介入を強行し、その結果、言うことを聞かない軍事政権を倒し、アリスティードを「条件付きで」大統領に戻しました。その条件が、関税をほぼ撤廃する「自由貿易政策」だったのです。

アメリカの理不尽極まりない圧力に、時折妥協しながらも屈しなかった大統領は、2000年の選挙で、4分の3の票を獲得し、アメリカの推す候補を引き離し、圧倒的な勝利で再選することになります。しかし、国際選挙監視団が選挙の公正さを保証したのにも関わらず、アメリカは選挙に不正があったと主 張し、裏で軍事介入を始めました。

アメリカは、前回のクーデター時の反政府勢力含む反アリスティード派に武器と資金の供給をし、ドミニカの反乱勢力をも後押しし、ハイチを攻めさせた。この2つの勢力が合流し、結果的にハイチの首都は制圧されてしまいました。結果的に、アリスティード大統領は拘束され、辞任に追い込まれることになります。

ハイチは、西半球の最貧国と言われています。泥のクッキーでも食べなければ生きていけないほどの貧しさ。それは、ハイチの人々が怠け者だからなのでしょうか?いや、ハイチの社会の崩壊は、アメリカ都合の軍事介入や、これもアメリカ都合の不公正な自由貿易によるものだったのです。

 

TPPに反対の人が危惧していることはこういうことだと思います。それは、日本政府も僕たち国民も、それぞれ賢く行動する能力が不十分だということを物語っていると思います。この点が問題の根幹であり、改善出来たとしたら、逆にTPPはチャンスに出来ます。もし、政府に自浄効果がなければ、僕たち国民が立ち上がるしかないということですよね。

(2011年11月16日に書いた記事をリサイクル)

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「衆院選2012(11)【TPP】自由貿易が国を崩壊させた例(ハイチの例から)」への1件のフィードバック

  1. ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家の八木啓代さんが、アメリカ-メキシコの自由貿易協定「NAFTA」の例から、TPPの危険性を警鐘しています。

    愛国と原発とTPP

    blogos.com/article/51945/

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