しばらく中断していた「理想の経営」シリーズ…

前回の「理想の経営(4)生意気ながら、サトマン氏の経営理論への批評を書きます」の続きです。

前回の記事で、サトマン氏の「お客を増やす」「収益を増やす」ということが大部分を占めていた講演内容について、生意気ながら批評をさせて頂きました。その上であまりにも忘れ去られていた点が「社会貢献」という視点だということも指摘させて頂きました。

そこで、企業の活動で収益を上げながらどこまで社会貢献が出来るかを「グラミン銀行」の例で見て行きたいと思います。

Prof. Muhammad Yunus visit borrower loan activities

グラミン銀行は、マイクロ・クレジットという手法で、微小なローンを貧しい人(特に女性)に貸すことにより、国内の貧困削減に貢献してきた。

ビジネスのターゲットは、従来の銀行からは相手にもされなかった貧しい人たち。
微小なローンを元手にそれぞれで極小の起業を促し、あらゆる点から支援し、ビジネスを成功させることによって高い返済率を維持している。
そして、結果的に企業としての収益が上がり、経営的な面でもビジネスが成り立っている。

こういった取り組みが評価され、創設者のムハマド・ユヌスさんとグラミン銀行が2006年にノーベル平和賞が授与された。

以下は、Web GOETHEの滝川クリステルさんとグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスさんの対談で紹介されていたグラミン銀行の取り組みについての紹介文。

慈善事業ではない、真の貧困からの脱却を目指したもの。特筆すべきは現在、800万人の顧客を有し、その97%は女性で、彼女たちが銀行の株主でもあるこ と。また、融資を受けた人々の子供たちの識字率はなんと99%に及ぶ。弱い立場にある女性の自立と生活向上を可能にしたシステムの根底にあるもの、それは “信頼関係に基づいた、徹底した決意の共有”だ。グラミン銀行から融資を受けるためには5人組を作り、メンバーはお金を借りる前にグラミン銀行の規則や考 え方を学ぶ。その後も、グループリーダーが活動報告や行員との交流を定期的に行う。この共同体としての原動力が、システム成功の重要なカギといえる。

一人一人の立ち上げるビジネスは小さいかもしれないけど、今や、バングラデシュでは、考えられないほど多様な職種が存在し、バングラデシュの社会を支えてる。道端でただ物乞いをすることしか出来なかった人々が、バングラデシュ社会の再建の役割をしっかり担っている。

ここで重要になってくるのは、グラミン銀行は慈善団体ではなく、あくまでビジネスを行っているという点。
それも、とても儲かっている。

最近は、BOP(bottom of the pyramid)ビジネスなんて言葉が出回っていて、「ビジネスターゲットとしての最貧困層」という可能性が考えられるけど、こういった見方は以前はほとんど存在しなかった。

例えば、現存する多くの銀行は、未だにターゲットのスコープが、所得や住居などの「ある一定の信用のある層」に限られている。つまり、ビジネス的に「堅い」ところしか相手にしないということ。

そういった従来型の企業の傾向性から、行政では手が届かず、企業からは相手にされずに手付かずの領域が、社会の中で拡大していってしまった。

NPO(非営利団体)はそのギャップの中に埋もれたニーズに対応するために生まれたが、「非営利」という縛りが存続を難しくさせている面があった。

そこで注目され始めたのが、グラミン銀行のような社会起業家たち。

社会起業家も、一般企業と同じ土俵に立ち、同様の競争原理にさらされる。一般企業との違いは、手付かずの社会的なニーズを満たすことで収益を上げようとする点。その上でいくらでも利益を追求出来る。

本来の企業の存在意義は、まさにこの「社会的企業」の姿のはず。なのにこういった新たな言葉が生まれる背景には、現存する多くの企業の正しい使命感の喪失があるのだと思う。

以前紹介したサトマン氏の講演でも痛いほどそれを感じた。
彼の講演内容からは、「手付かずの社会的ニーズを充たす」という部分の強調があまりにも貧弱過ぎた。
現行の多くの企業の「CSR(企業の社会的責任)」も、取って付けただけのおまけ的なものでしかない。

グラミン銀行は、最貧困層をターゲットにして誰の眼中にもなかった社会的ニーズを充たし、ビジネスを成功させた。
そして、「BOPビジネス」という概念が広まり始めた昨今、いよいよ、社会的起業の可能性や意義が高まってきている。

そういった中で、尚も、「社会貢献」の意識が薄くただ利益を追求するだけの企業は淘汰されていくべきだし、何より、僕たち消費者が賢くなり、企業を選ぶ目を養わなければいけないと思う。

次回に続く…