897-1-20130415173519先日、平塚の青年会議所が開催したサトマンこと佐藤満氏の講演を聞きに行きました。
勉強不足で佐藤氏のことは良く知らなかったのですが、ホンダカーズタイランドやフォルクスワーゲン、日本ゼネラルモーターズなどで社長を歴任してグローバルに活躍し、「伝説の男」と称される人物なんですね。
ビジネスの具体的な事例や先人たちの言葉など、部分的にはとても参考になりました。
ただ、根本的な部分で、ものすごく批判的に講演を聴いていました。
いろいろ質問してみたかったんですが、質疑応答の時間がなくて残念でした。
1時間ほどの講演で、佐藤氏も言い足りないことは多々あったと思います。
でも、その講演のほぼすべてを「お客を増やす」「売り上げ・利益を増やす」といったことに費やすのは如何なのでしょうか?
あたかも、それらが「企業経営の目的」になってしまっているような講演でした。
企業の存続と拡大のために「お客や利益を増やす」というのは、かなり低次元の目的感だと思うんです。
僕は、会社を経営した経験もないし、隠し立てする気もなく「負け組」の人間です。
普通の人は僕の話より佐藤氏の話を聞くでしょう。
それをどうにかする気は僕にはありませんので、ただ自分の感じたことを率直に書いてみようと思いました。
早速、率直に言ってみると、佐藤氏の経営理論は化石のように古く感じました。
もちろん、新しければ良いという訳では無いんですが、今の時代、「利益追求」でゴリ押しする経営理論は通用しないと感じます。
それは、ここ近年のMBA(経営管理大学院)の動向に現れています。
僕が行っていたポートランド州立大学(PSU)のMBAプログラムは、2009年のことですが、ノースウェストでナンバー1、世界で25位に選ばれました。(2009-2010 edition of Beyond Grey Pinstripes magazineで)
http://www.pdx.edu/news/portland-state-s-mba-program-named-1-in-the-northwest-25th-in-the-world
このプログラムが評価された背景に、social(社会の), environmental(環境の) and ethical(倫理の) issues(関連事)をいち早くMBAプログラムに取り入れた点だったそうです。
恐らく、マイクロクレジットでビジネスとしても成功したグラミン銀行なんかのことも、立派なビジネスのあり方として教えているのでしょう。
PSUに在籍していた時、ビジネス専攻の学生たちと一緒に学んだクラスがありました。
そのクラスは、近隣のことを、通りや公園、ビジネスや住宅の特徴などを多角的に学ぶクラスでした。
ビジネス専攻の学生にとっては選択科目なんですが、「近隣に配慮する」というごく当たり前のことを、学生にしっかり意識させようという意思を感じました。
従来の(日本では現在も!?)MBAプログラムでは、こういった分野をすっとばして、とにかく「利益を上げる」ことに主眼を置いていると思います。
ちょうど、佐藤氏の講演内容のように…
もし「売り上げを伸ばす」「お客を増やす」ことが目的になると、例えばこういうことが起こりえます。
統合失調症(7)活力を奪うだけの治療でも書いた通り、世界の精神科病床の2割を日本が抱えるという現状があります。
日本の精神医療は、精神障がい者が増え、回復しないことによってお客が増え、利益が伸びているという見方も出来ます。
もし、利益を伸ばす為にお客をもっと増やしたいなら、回復しないような治療を施し、精神障がいを抱えやすい社会構造をそのまま放置すればいいだけです。
恐らく、こういったことは、様々な場面で様々な形で今この瞬間にも起こっていると思います。
また、佐藤氏は、自動車関連会社で世界を股にかけて実績を上げていますが、必ずしも自動車を売りまくることが人や社会、環境に良い影響を与えるとは限りません。
当然、自動車が増えれば、そこに生活する人にとって危険が増えます。
また、エコ仕様の車が増えたとはいえ、環境にも具体的に悪影響を与えます。
そして何より、自動車が存続することによって、街は広がったままにならざるを得ないのです。
都市計画のモデルは「歩いて暮らせる」がキーワードですが、自動車を売りまくるということは、都市計画の目的との間に具体的に摩擦を起こします。
もっと言ってしまえば、社会や環境に責任を度外視している限り、いくら利益を上げても企業の持続可能性は保証されません。
自分の企業だけ一人勝ちしても、社会や環境が不安定になれば、結局は存続さえも危うくなるからです。
企業経営をする上で、「利益を伸ばす」ということは言うまでもなく重要ですが、こういった環境や社会への「使命や責任」は同じくらい重要だと思うんです。
売りまくればいいという訳ではなく、「必要な人に適量を売る」ということがその使命であり責任であるはずです。
多くの企業のマーケティングが「必要でもない人にいかに売るか?」になってしまっている感がありますが、これは本来の企業の使命からは外れてしまっているのではないでしょうか?
その前提で、商品やサービスを苦心しながら捻り出すというのが企業の本来の姿であるはずです。
一私企業でありながらノーベル平和賞受賞経験もあるバングラデシュのグラミン銀行は、社会貢献事業自体をビジネスとしてほぼ完璧に成り立たせたモデル的な企業だと思います。(グラミン銀行については別記事で詳しく書く予定です)
当然、佐藤氏がそういう部分まで考慮していない訳はないと思いますが、彼の講演の中でそういう部分にほとんど触れなかったのが僕にとって驚きでした。
講演の中で、僕が佐藤氏に質問したかった内容は以下のようなものです。

  1. 企業の社会的責任についてどう考えるか?
  2. 佐藤氏のこれまでの経歴の中で、具体的にどのように社会的使命と責任を果たしてきたと考えているか?
  3. 企業経営の根本的な使命と目的をどう考えるか?

何の実績も残せていない僕がこんな批評を出来る立場ではないんですが、僕自身がもっと理解を深めたいという想いから批評させて頂きました。
いろいろご意見を頂けると助かります。