子どもが図書館から借りてきた本を読み聞かせた。『さんねん峠』(岩崎書店)という朝鮮半島の昔話。
▼「さんねん峠で転んだならば、三年きりしか生きられぬ」という言い伝えのある峠で、転んでしまったおじいさん。ふさぎ込み、とうとう病気に。だれが励ましても“わしはもうだめだ”と、
▼ 頑ななおじいさんの心を解かしたのは、若者の一言。「もう一回、転べばいい」。とんでもないと血相を変えたおじいさんに、1回転べば3年、2回で6年、10回転べば30年も生きられる――と。青年の柔軟な発想が清々しい。おじいさんは喜んで何回も峠で転び、元気を回復した。
▼傍から見ると、“どうして、こんなことで”と思うことがある。しかし、当人にとっては大問題。ふさぎ込む心に、いかに納得と安心を与え、前進への息吹を吹き込んであげられるか。
▼本紙で好評を博している「親が子に語る仏教童話」。その一つに「シャリホツのあやまち」がある。舎利弗が鍛冶屋と洗濯屋を仏道に導く話だ。相手に合わせて対話することの重要性を示している。
▼形式的な通り一遍の言葉ではなく、悩んでいる人を心から思いやる一言。そうした励ましの陰には、相手の幸福と成長を願う、ひたぶるな祈りが必ずある。

聖教新聞(10/4) 「名字の言」より