もう終わったことだけど、僕がしたアムトラック(列車)でのアメリカ一周旅行の目的について書きたいと思います。

その旅は、ロサンゼルスから始まり、30日間かけて、ポートランド(オレゴン)ーサクラメント(カリフォルニア)ーデンバー(コロラド)ーシカゴ(イリノイ)ーサンアントニオ(テキサス)ーニューオーリンズ(ルイジアナ)ーニューヨーク(ニューヨーク)ーフォートランダーデール(フロリダ)ーワシントン(DC)ーミネアポリス(ミネソタ)ーポートランド、をまわるというものでした。

元々、初めてのアメリカ西海岸縦断旅行をしてから、アムトラックでのアメリカ一周旅行は目標として持っていました。
当時としては恐れ多い話で、この旅を始める前もまだ不安が先行して、アムトラックの30日有効なチケットを買うまで、全然実感がありませんでした。
そんな感じで、旅の目的として、まず自分を試す為というのがありました。

で、もう一つの大きな目的は、「危険なく、人間の尊厳を維持した形で、費用をなるべくかけずに、どこまで楽しみや喜びを与えてくれる機会にありつけられるか?」を各都市で、旅全体で体感するというものでした。

僕がビジネスや政治など何らかの未来を想い描く場合、基準に置くのは、低所得者など社会の底辺にる人たちです。
偽善なのか自分では良く分からないんですが、大学でCommunity Development(共同体開発)を学んだ経験などで、自然とそういう思考が体に染み付いてきました。
そう、このテーマを掲げて旅をすることに、自分自身が貧乏だということがとても都合が良かったんです。

579ドル(5万5千円くらい?)の列車の周遊パスを買う時点で「低所得者には無理だ」という人がいるかもしれませんが、これについても僕は思うところがあります。
この列車はただ移動する為にある列車ではなく、中で観光が出来てしまう列車なんです。

多くの現代人は、「目的地にどれだけ早く行けるか」だけしか考えなくなり、そのプロセスにも楽しみがあるということを忘れてしまっていないでしょうか。
飛行機での旅行が、そういったプロセスをすっ飛ばす一番分かりやすい例かもしれません。
ただでさえ、航空券は高いのに、現地のツアーなどでまた高いお金を払って観光をするとしたら、とても低所得者には手が届かないでしょう。

よく考えれば、30日間も列車の中で観光も出来るとしたら、579ドル(5万5千円くらい?)って物凄く安いと思いませんか?
下手したら、アメリカ国内宣の航空券の往復券くらいの値段です。

また、各都市では、宿泊費を抑える為にユースホステルに泊まるようにしました。
一晩、大体30ドル(3千円)以下です。
一番費用を抑えられる宿泊手段は野宿だと思うんですが、それだと人間の尊厳の維持に問題があると考え、やめました。

観光者向けのツアーや建物の入場料などは大体高くて、僕の経済力ではとても手が出なかったので、フリーのイベントをなるべく探しました。
それが、案外、いいイベントがあるんですよ。
公園やちょっとした駐車場などで、沢山の人と音楽とかアートとか映画を見ながらスナックやビールが飲めたりしたりとか。

だから、「お金をかけずに楽しめる機会があるか」というのがまず第一関門で、「そこまで物理的にアクセス出来るか」をクリア出来れば、低所得者の暮らしも豊かになると思うんです。
社会の底辺にいる人にとっては、こういった「機会があるか」、それに「アクセス出来るか」が生命線になってしまう人も沢山いると思います。

「物理的なアクセス」を実現するのは、歩ける距離でなければ、バスや電車などの公共交通に加えて、バイクや車のシェアシステムでした。
公共交通では、一日乗車券などが手頃な価格であるか、バスや電車などの包括的なサービスなのか、路線が目的地まで届いているかなどがポイントでした。
バイクシェアのサービスはデンバーとミネアポリスで活用しましたが、大体5ドルで一日メンバーシップを買い、街の主要な場所にあるドッキングステーションに毎回30分以内に返せば追加料金なしで、時間に応じて課金されていくサービス体系でした。
うまくやれば、追加料金なしの5ドルだけで済んでしまうのに、街中自転車のスピードで観光が出来てしまうという優れものでした。

そもそも、そういった交通の需要が発生してしまうのは都市計画がうまく行っていない証拠であって、ダウンタウン内の歩ける範囲で差別無く平等に楽しめる機会を凝縮させれば一番いいと思うんです。
例えば、デンバーは、ダウンタウン内の16th Streetというメインストリートに様々な機能を集中させていました。
何ていうか、そこに居て楽しいから、老若男女、所得に関係なく分け隔てなく集まってきます。

アーケードでも無いのに、ストリートには所々にピアノが置いてあって、誰でも弾けるようになっています。
そのストリートはカーフリー構造になっていて、フリーシャトルバスだけが通れるようになっていて、安全な環境でベンチが豊富にあって、うまい人も下手な人でも、ピアノの演奏をリラックスしながら聞くのがとても心地が良かったです。
あと、信号待ちしている時も、流れて来るピアノの音色を聞いているだけで、イライラ感が大分緩和されました。

授業で習った内容などから頭では原理として分かっていたことでも、実際に体感して経験してみないと分からない境地ってあるんだってことが分かりました。
この旅を通して、机上の空論から少し前進出来たような気がします。